極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

それを見ただけで店の名前が智子の口から出てくるとは。


「ええ、そうなんですよ。陽奈子さんが買ってきてくださったの」


陽奈子の名前が出たとたん、智子の表情が陰る。


「……あらそう」


買ってきた人物は気に入らなくても、買ってきた物には興味が大ありらしい。智子は胃のあたりに手を組んで、どうしたものかと目をあちこちへ泳がせた。


「あの……よろしかったらご一緒にいかがでしょうか」


陽奈子が恐る恐る声をかける。ここで怯んでいては、いつまでも智子との距離は縮まらない。
智子にキッと目を尖らせて見つめられても、なんとか踏ん張った。


「……そうね。せっかくだからいただくわ。タルトに罪はないもの」

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