極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

しばらく悩んでいた智子も、ようやく阿佐美の隣に腰を下ろした。


「ふふふ。よかったわ。お姉様は本当にタルトがお好きなんですね」
「あなたは余計なことを言わなくていいの」


ふたりのやり取りを見ながら、陽奈子は密かに胸を撫で下ろしていた。

(グランマーリエのタルトを買ってきてよかった……。きっとおばさまの好物なのね)

自分の手柄にこっそり拍手を送る。
グランマーリエの隣にある老舗せんべい店とどちらにするか迷ったのだけれど、あそこでタルトを選んで大正解だ。

三人分のタルトが取り分けられ、智子の分の紅茶もテーブルに並ぶ。


「貴行との生活はどう? なにか困っていることはない?」


紅茶で喉を潤したところで阿佐美に尋ねられた。
さすがにここで本当の悩みを母親に暴露するわけにはいかない。

陽奈子が大丈夫だと笑顔で返そうとすると、すかさず智子から鋭い言葉が投げかけられる。

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