極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「やあねぇ、阿佐美さん。月島家に嫁にきて、なにを困ることがあるの?」
庶民が身分違いの家に嫁いだのだから、万々歳じゃないかと言いたいのは言葉の端々から感じた。
「お母様、おばさまのおっしゃる通りです。なにも困っておりませんのでご心配なさらずに」
「そう? それならいいんだけど。主人が亡くなってから急きょ社長を継いだから忙しいでしょう? あまりふたりの時間がとれないんじゃないかと思って。新婚旅行もお預けだし」
「貴行さんの事情は十分わかっておりますので」
平日は朝早くから夜遅くまで仕事なのはもちろん、土日もしっかりと休めるのは少ないと、貴行から事前に聞いている。
結婚して一週間のうち、一緒に夕食がとれたのは一度だけ。それ以外は別々だ。
「そうよね。ツキシマ海運の社長夫人になれたんですから、ある程度の我慢は必要だわ」
ちゃちゃを入れた智子を、阿佐美が「お姉様」とたしなめる。智子は〝ふん〟とばかりに顎を横へ向けた。