極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「言ってごらん」
声まで艶っぽい。
おかげでそれに反応した鼓動がドクンと大きく弾んだ。
自分でねだっておきながら、このざまだ。
「も、もう忘れちゃいました」
「そんな答えで済むと思う?」
「で、でも、本当にいつの間にかなんです。本当は初夜のときもここで貴行さんがくるのを待っていたんですけど……」
ぼそぼそと口ごもる。まさか白状させられるとは思いもしなかった。
目を丸くし、貴行が陽奈子を見る。
「あの夜、俺を待ってたのか」
「……初夜ですから、一応」
陽奈子が顔を真っ赤にして答えると、貴行は深く長く、大きなため息をついた。
「俺はずいぶんと愚か者だな」
陽奈子はそんな貴行の様子がおかしくて、ついクスクス笑う。