極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
(あのときから私を!?)
まさかマルタ島の時点でそう思ってくれていたとは。
「あんまりお人好しすぎて危なっかしいからだ」
「……そんなに危なっかしいですか?」
危険が迫るような事態に陥ったことはないし、そんなものとは縁遠いと思うが。
「かなりね。日本へ帰ってきて、必死に陽奈子を探した」
「え? じゃ、たまたまじゃないんですか?」
ツキシマ海運の下請けである豊の工場の借金を知り、その技術ほしさに結婚を申し入れたのではなかったのか。
その工場の娘が、偶然陽奈子だったのではなかったのか。
てっきりそうだと考えていた。
ところが貴行はゆっくりとかぶりを振った。
「陽奈子を見つけたのが先だ。お父様の借金と技術は後づけ。お人好しの陽奈子につけ込んだ。陽奈子なら工場を人質にすれば、俺との結婚から逃げないだろうとね」
「……そこまでして私を?」