極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
何気ない日常
青白い光が満ちた薄暗い部屋のテーブルに、コトンと音を立てて缶コーヒーを置く。
「差し入れなんて珍しいな。なんかいいことでもあったか?」
パソコンのモニターから顔を上げた誠が、貴行に向かって白い歯を見せた。
「べつに」
そう言ったものの、口もとはどうしたって綻ぶ。それを手で隠すようにして誠を見下ろした。
「いいや、貴行がこういう妙な真似をしたときは、たいていいいことがあったときだ。幼馴染の俺をなめんなよ?」
「ないって言ってるだろ」
ようやく妻を抱けたなんて白状すれば、それこそ命が尽きるまで誠にからかわれ続けるだろう。
女に百戦錬磨のお前がなにを血迷っているのだと。そんな事態はごめんだ。
「ヘイヘイ。それならそういうことにしておこう」