極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
カチッと音を立てて、缶コーヒーのプルタブを開ける。よほど喉が渇いていたのか、誠はそれをひと思いに飲み干してテーブルに置いた。
「陽奈ちゃんとの新婚生活はどうだ」
「〝陽奈ちゃん〟? 馴れ馴れしい呼び方はよせ」
「いいだろう? べつに減るもんじゃないし」
「お前が呼ぶと減るんだよ」
貴行が持っていた自分の分の缶コーヒーを誠の頬に不意打ちであてる。
「っつめて! なにすんだよ」
「無駄口叩いてないで、サクサク仕事しろ」
「言われなくてもしてるっての。ったく人使いが荒いねぇ」
誠は愚痴を言いながら、再びモニターに向かった。
ローマ字のコード表がつらつらと流れていき、キーボードの素早いタイピング音が部屋に響く。
「安西大和に会った」
貴行の言葉に、誠は一瞬だけ手を止めて「……誰だそれ」と聞き返した。