極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

「五年前の輸送船とタンカーの事故で、責任を感じて自殺した航海士の息子」


葬儀に会ったきりだから最初はピンとこなかったが、陽奈子に名前を聞いて気づいたのだ。
五年前、『どうして親父が死ななきゃいけないんだ!』と貴行の父親に食ってかかったのは今でもよく覚えている。


「あぁ、あの事故で責任を感じて自殺した男のか。で、どこで?」
「陽奈子が働く店」


まさかあそこで会うとは思いもしなかった。
大和が貴行に気づいたかどうかは不明だ。


「客としていたのか」
「いや、そこの店長だ」
「……それ、大丈夫なのか?」


再び手を止めた誠が貴行を見上げる。

誠の言いたいことはわかる。
父親の死に不満を抱いている息子が、陽奈子のそばにいるのだ。身の危険はないのかと言いたいのだろう。

陽奈子がツキシマ海運の社長と結婚した話は、大和も当然聞いているはず。

< 213 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop