極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「おいおい、俺は縛られるのはごめんだ」
「縛るつもりはない。システムさえ構築してくれれば、どこにいたっていいさ」
「まあね。でもなんだって急に?」
「誠に話して聞かせるような話じゃない」
陽奈子を侮辱した薄汚い男の話など、口にするのも忌々しい。顔を思い出しただけで虫唾が走る。
「ま、俺には関係ないけどさ。ただし、少々高くつくぞ? なんせ藤谷誠さま直々の設計だ」
「幼馴染じゃないか、負けろ」
「大企業の社長が聞いて呆れるな。――っと、きたぞ」
椅子に背中を預けていた誠が、いきなり前のめりになる。モニターにぐいと顔を近づけ、応戦体勢だ。
〝ネズミ〟が現れたらしい。誠が仕掛けた〝偽の情報〟に侵入してきたのだろう。
「よしよしよし。URLストリングとCookieのセキュア属性を見にきたぞ。コイツは確実に〝黒〟だな。そのまま延々と〝ゴミ情報〟を読みやがれ」
誠は不敵に笑い、肩を揺らす。モニターの青白い光がメガネを照らした。