極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「いつものヤツか?」
「ああ」
誠のトラップに触れた瞬間、その攻撃者の特徴を示す〝デジタル指数〟、いわば指紋のようなものが作成され、その情報が蓄積されているのだ。
使用OS、Webブラウザの種類やバージョン、プラグイン、キーボードの言語など二百以上の属性を瞬時に収集している。
「ただ、コイツの面倒なところは、追跡をかわすためにIPアドレスを変えたりするところなんだよ。特定を困難にさせてる」
時代とともにハッキング技術も進み、現在はもはや企業単独で対抗できる攻撃レベルではなくなりつつある。
ツキシマ海運に幾度となく侵入を試みているハッカーも、相当な技術の持ち主だろう。なにしろ誠が手を焼いているのだから。
「まぁ、今回も俺が丹精込めて作ったゴミ情報だけしか盗めないけどね」
「とにかく、役員の承認も得ているから、よろしく頼む。契約書も早急に作っているところだ」
「ヘイヘイ。あーあ、また寝不足の日が続くわけか」
「頼りにしてるぞ」
誠の肩をトンと叩き、貴行はその部屋をあとにした。