極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

陽奈子の申し出を笑顔で制止する。

(どうやら俺は、顔を出すべきじゃなかったな。おとなしく外で待っていればよかった)

陽奈子の顔見たさにのこのこ店内までやってきたが、貴行は仕事の邪魔をしただけのようだ。


「陽奈子ちゃんの旦那様ですよね? 安西大和と申します」


まるで初対面のような言い方が引っかかる。
貴行がツキシマ海運の社長だと知らないわけではあるまい。


「大和さんには、いつもよくしていただいているんです」


陽奈子の言葉を受けて、貴行も軽く頭を下げる。
〝よくしていただいている〟の意味を勘繰って、心がざわついた。


「月島です。いつも妻がお世話になっております」
「せっかくですから、陽菜子ちゃんが作る一杯を飲んでみてはどうです?」


あくまでも貴行を知らないスタンスを貫く大和が、ニコニコと屈託のない笑みを浮かべる。

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