極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
普段からコーヒーはブラック。貴行はどちらかといえば甘いものが苦手なほうだ。
とはいえ、せっかく陽奈子が作ったものを飲まないわけにはいかないだろう。「ありがとう」と受け取ると、陽奈子はうれしそうに笑った。
陽奈子が着替えて出てくるのを車のそばに立って待つ。
ひと口飲んでみたそれは想像していたほど甘くはないが、そこはやはり生クリーム。ひとりで飲み干すのはきついだろう。
しばらくすると、店のほうから陽奈子が小走りにくるのが見えた。
(そんなに慌てなくてもいいのに)
やけに必死な様子を見て笑みがこぼれる。
陽奈子を前にすると、いつの間にか自分が笑顔になっていると気づくことが多い。
笑わされているわけではないのに、彼女を見ているだけで無意識に笑顔になる。そんな不思議な感覚は、初めて会ったときから変わらない。
陽奈子が自分を形容して言う〝誘っているような顔〟というのは、人の好さが顔に現れるためだろう。優しさがにじみ出ているから、男の心をくすぐる。
そんなふうだから貴行は放っておけなくなるのだ。