極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
急いで駆け寄ってしゃがみ込むと、予想通りそれは智子だった。やはり顔色が悪い。
「どうされたんですか?」
陽奈子を見て智子の目が鋭くなる。
「……べつにどうもしないわよ」
そんなわけはないだろう。どう見ても具合の悪い顔だ。
声にも張りがなく、結婚式のときに陽奈子に対してとった威勢のよさは、微塵も見られない。
「ですが、顔色が……。どこかお加減が悪いんじゃないですか?」
「放っておいてちょうだい」
肩に置いた陽奈子の手を邪険に払う。その手すら、か弱い感じだ。
「いえ、放っておけません。とりあえず立てますか?」
「平気よ。少し座っていれば良くなるから」
「ダメです。ここでは日差しもありますから、せめて日陰に行きましょう」