極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
智子の腕を掴み、強引に立たせる。
陽奈子に対する嫌悪感よりも体調不良のほうが勝ったのだろう。最初こそ拒んでいたけれど、陽奈子の言うことを聞いてよろよろと歩きだした。
かといって、日陰で休めるような場所はすぐそばにはない。
「私が働いている店が近くにありますから、そこで休みましょう」
店まではおよそ五十メートル。
おぼつかない足の智子を支え、なんとかたどり着いた店のドアを開けると、真っ先に気づいた早紀が「どうしたの!?」とカウンターから飛び出してきた。
「具合が悪いみたいで」
「そう。横になれたほうがいいわよね? 大和さんに確認してくるから、ちょっと待ってて」
いったん奥に引っ込んだ早紀が、大和を連れて戻ってくる。
「スタッフルームならソファがあるから、とりあえずそこで休んでもらおう」
「ありがとうございます」