極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
◇◇◇
救急で診てもらった結果、医師から告げられたのは鉄欠乏性貧血という病名だった。
智子の場合はフェリチンという値がほぼゼロに近いようで、極度の貧血とのこと。病室で鉄剤の点滴を打ちつつ、今夜は大事をとって入院となる。
診察を待っている間に貴行と阿佐美に連絡を入れたが、貴行は会議中で病院へは来られないという。阿佐美は智子の夫を連れて、すぐにこちらに向かってくれるとのことだった。
その到着を待つ間、陽奈子は特別室で休んでいる智子のベッドサイドに静かに腰を下ろした。
「貧血なんて柄じゃないのにって、心の中で笑ってるでしょ」
点滴で少し容態が回復したのか、智子が早速憎まれ口を叩く。陽奈子を不満そうな目で見た。
「笑ってないです。でも、元気が出たようでホッとしました」
顔にも血色が戻りつつあるし、なによりも智子の目に力が感じられる。
道端で見つけたときには、それこそそのまま意識を失ってしまうのではないかと思うほどだったのだから。