極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「あなた、私のことは憎いはずでしょ? どうして助けたりしたのよ。放っておけばよかったじゃない」
眉間に深く皺を刻んではいるものの、どことなくいじけているようにも見える。
智子とはこれまでに数える程度しか会ったことはないけれど、強いオーラで尖った大きな岩のような印象が、今はずいぶんと丸みを帯びて感じた。
「そんなことはできないです。それに、憎いなんて思ってないですから」
「嘘ばっかり。だって私、あなたにひどい態度しかしていないのよ? 私だったら、そんなおばさんが倒れていたら無視して通り過ぎるわ。それこそ〝ざまぁみろ〟ってね」
上品な智子に似つかわしくない言葉が飛び出したものだから、陽奈子はついクスッと笑ってしまった。
「あら、なぁに?」
キッと睨まれて、慌てて姿勢を正す。