極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「わ、わかっていればいいのよ、べつに」
智子の目が泳ぐ。陽奈子が素直にそう言うとは思ってもいなかったのかもしれない。
「でも私、貴行さんを好きなんです。だから、それだけはおわかりいただけないでしょうか……」
智子が離婚を望んでいたとしても、それだけはどうしても譲れない。
陽奈子が智子に頭を深く下げたときだった。
病室のドアがノックとともに開かれ、そこから阿佐美と智子の夫がドタバタと入ってきた。
「お姉様、大丈夫!?」
「おい、驚くじゃないか!」
重なったふたりの声は、智子が「ここは病室なんだから静かにしてちょうだい」と注意するほど大きかった。
「大丈夫よ。陽奈子さんが大げさだから。少し休んでいれば平気だって言ったのに、病院にまで連れてこられちゃったわ」