極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

すっかりいつもの調子に戻ったようだ。
そんな智子の様子を見て、陽奈子もホッと息をつく。


「とかいって入院じゃないか。陽奈子さんが居合わせなかったら、どうなっていたかわからないんだぞ? 陽奈子さんに感謝しなさい」
「あっ、いえっ、お気になさらないでください」


焦りながら両手を胸の前で振る。
夫に軽く叱られ、智子は唇を尖らせた。


「陽奈子さん、本当に悪かったね。扱いの難しい人だから大変だっただろう?」
「いえいえ、大丈夫ですから」
「本当にありがとうね、陽奈子さん」


ふたりにそこまで言われると恐縮してしまう。
あたり前のことをしただけであって、そんなに感謝されると逆に困る。


「あの、それでは私はこれで失礼いたします」


ふたりが来たから、もう安心だろう。

(仕事も放ってきちゃったから、早く戻らないと)

陽奈子が病室のドアを閉めるまで、ふたりから何度も頭を下げられたのだった。

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