極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
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その夜、貴行が帰宅したのは、陽奈子がキッチンで食事の準備をしているときのことだった。
出迎えるつもりでいたのに、貴行は自分でカギを開けて入ってきたようだ。
「おかえりなさい」
タオルで手を拭きながら振り返ったところを貴行に抱きしめられた。
「ただいま。今日は悪かったな、病院へ行けなくて。おばさんのこと本当にありがとう」
「いえ。すぐにお母様がいらしてくださったので。おばさまも心配はなさそうです」
貴行によると、昔から貧血気味なところがあったという。
今日は暑さも災いして、気分が悪くなったのだろう。
「さんざん嫌味を言われているのに、陽奈子は本当にお人好しだな」
「でもそれは月島家を思うからこそですし。それに、おばさまは私の家族でもありますから」
思ったままに答えると、陽奈子を引き離した貴行は優しく微笑んだ。