極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
さっきまでの甘い雰囲気はどこへいってしまったのか。
「簡単に男の車に乗るものじゃない。なにかあったらどうするつもりだ」
「なにかって。なにもないから大丈夫ですよ」
貴行の言いたいことはわかる。大和が男だから心配しているのだろう。
でも、大和には彼女もいるし、陽奈子をどうこうしようと考えるような男でもない。
「陽奈子はそういうところが甘い」
表情を険しくさせて、「だから男につけ込まれるんだ」と続ける。
(そんな……)
胸がきゅっと潰される思いがした。貴行にそんなふうに言われると、とてもつらい。
以前、マルタ島で人からよくそう言われると話したときには、そんなことはないと言ってくれたから余計だ。
その言葉で陽奈子がどれだけ救われたか。
「……いや、ごめん。そんなつもりじゃないんだ」
すぐに訂正したけれど、その顔は曇ったまま。
「先に風呂に入ってくる」
貴行は陽奈子の頭をポンと撫で、バスルームに向かった。