極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
忍び寄る黒い影
翌日。貴行は社長室で秘書の歩美とスケジュールの確認をしていた。
昨夜は言ってはいけない言葉を陽奈子に投げつけ、最悪の雰囲気にしてしまった。傷ついたような陽奈子の顔は、一夜明けても貴行の心を締めつける。
シャワーを浴びて気分を変えてから謝ろうとしたが、キッチンに陽奈子の姿はなく、用意された夕食が残されているだけだった。
悪気はなかった。
ツキシマ海運に関わりのある安西大和の存在に惑わされ、陽奈子を送ったという事実に嫉妬しただけのこと。
すぐに寝室に向かったが、ドアの前でノックしようとした手を止め、書斎に籠る道を選んでしまった。
(ったく、なにをやってるんだ俺は。情けないな)
仕事中だというのに、深いため息をつく。
すかさず歩美から「お疲れですか?」と気遣われた。
「いや。……高畠さんは夫婦仲はうまくいっているのか?」
「社長、それはセクハラですよ」