極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

店まで迎えに行けばよかったと後悔に襲われた。
とにかくここでじっとしていても仕方がない。女将に陽奈子が到着したら連絡をほしいと言い置き、貴行は店を出た。


「なにかございましたか?」


車で待っていた運転手に不思議に思われたが、それには答えず、陽奈子の店へ向かうよう告げる。

走り出してからも陽奈子のスマートフォンを鳴らしたが、さっきと状況は変わらない。呼び出し音だけが虚しく響くだけだった。


オーシャンズベリーカフェのあるビルの前に車を止め、店まで走る。気持ちばかりが先をいき、足が間に合っている気がしない。

ドアを勢いよく開けると、そこに店長である大和の姿があった。

(……どういうことだ。アイツが陽奈子を連れ出したんじゃないのか……?)

貴行は、ツキシマ海運に恨みを持った大和が陽奈子に危害を加えようとしているのではないかと考えたのだ。

その大和が目の前にいる。
ほかに心当たりがないため、貴行は大きく動揺した。

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