極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「あの……陽奈子ちゃんなら帰りましたけど?」
大和が不思議そうに貴行を見る。
「……何時頃こちらを出ましたか」
「いつも通り六時過ぎに」
だとすれば、やはりどこかで渋滞か事故にでも遭ったのだろうか。
いやしかし、貴行が通ってきた道路はそんなことはなかった。
それならば、電車で向かって、どこかで足止めをされているのか。
だがそうだとしても、電話にくらい出られるだろう。
「あの、ちょっとよろしいですか?」
あれこれ考えている貴行に大和が申し訳なさそうに声をかける。
「私を、おわかりですか?」
予告なしに尋ねられ、一瞬面食らう。
「安西さんの息子さん、ですよね」
「ええ、そうです。陽奈子ちゃんがいるときはなんとなく言いだしづらかったものですから。ご挨拶が遅れてすみません」
「いえ、こちらこそ失礼いたしました」