極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

互いに頭を下げ合う。
こういった展開になるとは思いもせず、貴行はにわかに動揺した。


「父の葬儀の際は申し訳ありませんでした。非礼をお詫びします」


暴言を吐かれたことを思い返した。
しかし、あのときは取り乱しても仕方のない状況だ。貴行もそれについては物申すつもりはない。


「十分すぎるほどの補償をしていただき、母共々、とても感謝しております」


大和はもう一度深く頭を下げた。


「大変有能な航海士だったと伺っております。私どもも本当に残念です」


大和が陽奈子に危害を加えるのではないかというのが、取り越し苦労だったと思い知る。

それじゃいったい、陽奈子はどこへ?

そのとき、貴行のスマートフォンが胸ポケットから振動を伝える。

(――陽奈子か!?)

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