極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

慌てて取り出してみれば、それは誠からの着信だった。
こんなときになんなんだ。


「月島だ」
『オイオイ、出るなりなんだよ。ずいぶんと苛立ってるじゃないか』


不機嫌に出た貴行を電話の向こうで誠が諌める。
苛立つのも当然だと鼻息が荒くなった。


「今、誠と話してる暇はない」
『それは心外だな。やっとネズミの尻尾を捕まえたって報告が入ったのに』


それはおそらくこのところツキシマ海運のシステムに侵入を試みている輩だろう。


「悪いが――」
『やつの正体がつかめたぞ』


貴行に構うことなく誠が続ける。

ころころとIPアドレスを変えてはツキシマ海運にハッキングしていたが、つい先日とうとう足がつき、貴行の伯母である智子の夫――弁護士を通じて警察にIPアドレスの開示を求めていたのだ。

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