極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
早紀の言っていることはたしかに陽奈子の耳に入ってはきてるのに全然理解できず、頭の中でぐるぐると回るばかり。
早紀は、はなから陽奈子を貴行の待つ店に送るつもりはなかったと言う。
(……どうして?)
それでは、なぜ陽奈子を車に乗せているのだろうか。
「私ね、月島貴行との結婚話があがっていたことがあるの」
「えっ……?」
まるで脳天にストレートパンチを食らったような感覚だった。思いも寄らない話をされ、陽奈子は頭が混乱する。
(早紀さんと貴行さんに結婚の話が……?)
想像の遥か彼方をいく打ち明け話だった。
「彼のお父様が亡くなる以前の話よ。私の父は、ツキシマ海運の取引銀行の頭取だったの」
「〝だった〟?」
過去形だ。