極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

切実な陽奈子の訴えは、早紀には届かないようだった。
笑みを封印し、強い視線で陽奈子を射抜く。


「……私をここへ連れてきて、いったいなにをするんですか?」
「そうね、なにをしようかしら」


小首を傾げ、どこか楽しそうに唇の端を上げる。そして、思い出し笑いをするようにクスッと笑った。


「今頃、テレビで大々的に報じられているんじゃないかしら」
「テレビで? なにをですか?」
「私ね、ここへ来てすぐマスコミにメールしたの」


さっきパソコンを使っていたのは、メールを送っていたのか。


「【ツキシマ海運の社長夫人を誘拐した】って。ふふふ」


早紀が楽しげに言う。


「早紀さんになんのメリットがあるんですか?」

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