極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

わざわざ公表する意図がわからない。
捕まえてくださいと言っているようなものではないのか。


「やだ、わからないの? 誘拐に発展するような揉め事がツキシマ海運にあるって、日本全国に知らしめられるじゃない」
「……それが目的だったんですか」


早紀の考えていることは陽奈子の斜め上をいき、想像の範疇を軽く飛び越えていく。


「身代金を要求していないんだもの、恨みを買うようなことがあったんだってね。マスコミはきっと、こぞってツキシマ海運を調べ上げるわよ。そして、悪評が次々と週刊誌やテレビでさらされる」


早紀は高らかに言うと、肩を揺らしてケタケタと笑った。

たしかにマスコミは食いつくかもしれない。大企業のネタを掴み、おもしろおかしく報道するだろう。
でもそれでは、早紀の父親のことや早紀自身のことまで調べられ、いいことはなにもないように感じる。過去を蒸し返され、早紀も嫌な思いをするのではないか。

唖然とする陽奈子を横目に早紀がテレビをつけると、静かだった部屋がにわかに騒がしくなる。

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