極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
ふと眠気を覚え、陽奈子の口から大きな欠伸が出てくる。それも一回、二回ではなく、立て続けに。
「そろそろ効いてきたかしら」
「……なにがですか?」
「睡眠導入剤」
「えっ……」
さっき、毒は入れていないと言わなかったか。
咄嗟に胸を押さえるが、そうしたところで薬を吐き出せるわけでもない。
「睡眠導入剤は毒じゃないでしょ? 私がいつも服用しているものよ。ちょっとの間、眠ってもらったほうがいいかなと思って」
「そんな……」
反論しようにも、身体がみるみるうちに重くなっていく。
なんとか意識を保とうと必死に目をこじ開け、睡魔と格闘する。
ここで眠るわけにはいかない。
陽奈子がソファに手を突いて身体を支えたときだった。
ドーン!という物音とともに、大きな足音がこちらにやって来る。