極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

「陽奈子!」


貴行の声がしたような気がした。
でも、そんなはずはないとすぐに打ち消す。睡眠導入剤で、陽奈子の願望が幻聴となって現れたのではないか。

そう考えているそばから、もう一度「陽奈子!」と貴行の叫び声が聞こえる。

(――まさか、嘘でしょ)

懸命に目を開き、リビングの入口を凝視する。


「ちょっとなんなの? どうして!?」


悲鳴にも似た声を早紀があげた。
そして次の瞬間、信じられない姿が陽奈子の目線の先にあった。

貴行だったのだ。

玄関を蹴破って入ったのか、険しい表情で肩を上下させていた。


「陽奈子! 大丈夫か!?」


意識が朦朧とする中、貴行が駆け寄る。いつもきちんとしているスーツは着崩れ、ネクタイも外している。

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