極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
ハネムーンは思い出の地へ
事件から一ヶ月後――。
どこからか水の音が聞こえた気がした。
寝室のベッドで寝ていた陽奈子はしばらくまどろんでいたけれど、無意識に手を伸ばしたところに貴行がいないと気づき、パッと目を開ける。
(……貴行さん?)
やはり隣に貴行の姿がない。
ベッドサイドの時計は、間もなく午前〇時を迎えようとしていた。
身体を起こしてベッドを下り、寝室を抜け出す。
仕事をしているのかと向かった書斎は真っ暗。リビングへ下りていくと、大きな掃き出しの窓の向こうにあるプールで人影が動くのが見えた。
窓を開け、素足のままデッキに下りる。
全長二十メートルのプールは、下からのライトで青々と光っている。そこにはゆったりと泳ぐ貴行がいた。
寝室で聞こえた水音は、ここから聞こえたようだ。
「貴行さん」
その呼びかけに反応して、貴行がクロールでプールサイドへやって来る。