極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

さすがに社長である貴行はそうもいかないため、毎日会社へ出向いている。
ところが、ことあるごとにテレビカメラに映り雑誌に写真が掲載されるため、大企業をけん引するイケメン若社長ともてはやされ、悩ましい部分でもあった。

あの夜、思わぬスピードで陽奈子が助け出されたのは、貴行が陽奈子のバッグに付けておいた発信機のおかげだった。

度重なるハッキングの成果をあげられない犯人。そして、陽奈子の勤め先の店長が、海上事故で自殺した航海士の息子だという偶然。

それらが貴行を警戒させる要因となった。

すぐに陽奈子の居場所を突き止め、月島の権力を使い特殊部隊を総動員して踏み込んだのだ。


「早紀さんはどうなるんでしょうか」


貴行の腕がほどかれ、陽奈子がポツリと呟く。


「もちろん実刑が下されるだろ。誘拐は量刑が重いと言われているからな」
「……被害者の私が嘆願書を書いたら、少しは軽くできますか?」


事件には巻き込まれたけれど、どうしても早紀を憎む気持ちにはなれない。

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