極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
貴行に抑揚つけて名前を呼ばれ、智子がこそこそと阿佐美のうしろから出てきた。
「ひ、陽奈子さん、この前はその……」
智子の言いたいことはわかる。
おそらく病院へ付き添ったお礼なのだろう。でも、これまでの態度から素直に口にできずにいる。
「おばさま、いいんです。わかっていますから」
陽奈子の言葉が逆に智子を動かす。
「そういうわけにはいかないわ」
天邪鬼なタイプらしい。
「助けていただいてありがとう。それと……今までひどいことを言って悪かったわ。ごめんなさい」
頭を下げた智子の肩を阿佐美が、労ってトントンとする。
どことなく罰が悪そうにしながら、智子は肩をすくめて微笑んだ。
「私もまだまだ至らない点があると思いますので、これからいろいろと教えてください」
「それなら任せてちょうだい。月島家のしきたりだとか、これからのことを手取り足取り教えて差し上げるわ」
意気揚々と胸を張る智子を見て、陽奈子たちは顔を見合わせて笑った。