極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
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四ヶ月ぶりのマルタ島は、以前と変わらないゆったりとした時間が流れ、空気に触れるだけで陽奈子を幸せな気持ちにさせる。
それはきっと、ここで過ごした貴行との時間が楽しかったせいもあるだろう。
貴行と手を繋ぎ、バレッタの街を歩く。
道端に咲く花も行き交う人も、すべてが眩しい。
報道陣に囲まれることもなければ、テレビや雑誌であることないことを書かれる心配もない。開放的な気分が、陽奈子の心を癒していく。
もう少し行けば、女性が指輪を失くして困っていた場所だ。
初めて会ったときも二度目の再会をしたときも、貴行の印象は最悪だった。
そんなことを思い出して陽奈子がクスッと笑うと、貴行は「なに」と顔を覗き込んだ。
「ううん。貴行さんとここで会ったときのことを思い出していました。口の悪い人だったなって」
「なんだと?」
吊り上げた目は笑っている。
「陽奈子のほうこそ、ほんとバカみたいにお人好しでな」