極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

赤い布製のソファを勧められ、貴行と並んで腰を下ろす。
アマーリアと名乗った女性は、ダージリンティーを淹れてテーブルに置いた。


「あのときは本当に助かったわ。見つからなかったら、もう生きていけないところだったの」


アマーリアの夫は一昨年、病気で亡くなったという。その夫からのプレゼントが、あの指輪だったと。
部屋の片隅には、その夫の写真が額に入れて飾られていた。


「見つかってよかったですね」


そんな話を聞くと、なおさらそう思う。


「でも、こちらこそあなたには感謝しているんです」


貴行の言葉に、陽奈子もアマーリアとともに彼を見る。


「あなたが指輪を落として困っていなかったら、僕は陽奈子とこうしていなかったでしょうから」

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