極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

どれくらいカメラマンをやっていただろうか。撮影の列をようやく消化したところで、ほっと息をつく。

改めて要塞都市のような街を見て、今度は感嘆のため息を漏らした。

(本当に綺麗……)

そう思った直後、湾から少し強めの風が吹きつける。


「あっ……!」


日差しを避けるために被っていたつば広の帽子がふわりと浮いたかと思ったら、その風に乗って飛ばされてしまった。

長い髪を風にあおられながら帽子を追いかける。
捕まえようと手を出してくれた数人の人たちの間をすり抜けてふわりふわり。

しばらく自由に舞ったあと、石畳の上に着地したそれを長身の男性が拾い上げた。


「すみません。ありがとうご……」


顔を上げながら英語でお礼を言おうとした陽奈子は、途中で言葉を止めざるを得なかった。
口は半開き。瞬きをするのも忘れて呆然とする。

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