極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

マルタ島のやわらかで爽やかな空気に、一瞬で華やかさが加わる。周りの雰囲気まで変えるほどの容姿に息をのんだ。

綺麗に整えられた凛々しい眉に、左右対称の知的な目もと。スッと通った鼻筋に続く唇は薄く、風に吹かれた黒髪はサラサラと涼しげになびいていた。

(綺麗な男性(ひと)……)

美しいという形容が男性に対してふさわしいのかわからないけれど、ほかの表現が見つからない。

目を奪われるのは顔だけではない。彼の身なりもまた、洗練されたものだった。
ノーブルなネイビーのシャツに柄をあしらった細身のトラウザーズ。タイトフィットなスタイルにホワイトブレザーで格調高さを演出しつつ、素足履きしたスエードのタッセルローファーがエレガントなニュアンスも足している。

内からにじみ出る品の良さとあふれる自信が、その場の空気を華麗なものに変えるのだろう。

ものの数秒のうちにそこまで観察できるほど、陽奈子は彼に見惚れていた。

三十歳前後だろうか。美しい景色と一緒に写真に収めたくなるような、まさに容姿端麗という言葉がぴったりの男性だった。

(日本の人? それとも外国の人?)

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