極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「それはそうですが」
「実はこう見えて方向音痴なんだ」
それはまた意外な弱点だ。
「見知らぬ土地ならなおさら。陽奈子が一緒に行ってくれると助かる」
貴行はこれまでにない優しい笑みを浮かべた。
そう言われてしまうと、突っぱねられなくなる。
困っている人を知らんぷりにするのは、陽奈子にとって至難の業。それは、意地悪な言葉をさんざん放った貴行であっても同じなのだ。
彼の言うように、誰と行こうが美しい景色が変わるわけではない。とりあえず現地に着けばいいのだ。そこから先は別行動だっていいだろう。
「わかりました」
陽奈子が答えると、貴行は満足げにうなずいた。