極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

「はしゃぎすぎ」


クスクスと笑われ、そこでようやく冷静さを取り戻す。


「……すみません」


首をすくめて謝ると、貴行は「まるで子供だな」とニヒルな笑みで嫌味を言った。

(綺麗なものは綺麗なんだもの。素直に感動してなにがいけないの?)

反発心が芽生えたものの、なんとか言葉を飲み込む。美しい景色を前にしてケンカはしたくない。

ゆっくり深呼吸をして六秒数える。
それは、カチンときたときに怒りをやり過ごす有効な手段だ。いつだったか母から教わったことがある。

そして実際に意外と効果抜群なのだ。清々しい景色を眺めているせいもあるだろうけれど、心がスーッと落ち着いていく。

ところが、それも束の間。


「新婚さん?」


ボートに乗船していたガイドの男性が、陽奈子たちに声をかける。

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