極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「えっ? 私たちですか? ち、違いま――」
「そうなんですよ」
否定しようとしたそばから、貴行が冗談めかして答えた。しかも、肩を引き寄せる周到ぶり。
「ちょっと、〝そう〟ってなんですか?」
急いで肩を押し返し、ガイドにわからないよう日本語で抗議する。
「こういうときはそう答えたほうがいいんだ。ほかにどんな関係だって言う? こんなロマンティックな場所に日本人がふたりで来て、見ず知らずの者同士ですってのもおかしいと思わないか? 質問した相手も反応に困るぞ」
言われてみれば、そう思わなくもない。恋人や新婚だと答えるのが無難な気がしてきた。
「……そうですね」
「だろう?」
貴行はフフンと鼻を鳴らした。言い負かしたといったところか。
「おふたりの写真を撮りましょうか?」