極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
ガイドが手を伸ばす。カメラを貸してというのだろう。
「いえ、大丈夫です」
顔写真、それも貴行と並んだ写真なんて撮る意味がない。
ところが、彼はそうは思わないらしい。
「新婚だぞ?」
どこかおもしろがるように唇の端を上げ、陽奈子の手からデジカメを取り上げる。
「あっ……」
ストラップを掴もうとしたが間に合わない。そうして、お願いしますとガイドに手渡し、貴行は陽奈子の肩を抱き寄せる。
「しっかり笑えよ」
さらには耳打ちまでされ、ビクンと身体が震えた。
(ちょっ、ちょっと待って……!)