極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

頬がくっつくほど寄せ合った顔。密着する左半身。不本意だが、鼓動の高鳴りは抑えられない。

貴行にそそのかされたとはいえ、新婚を演じるならばここで突っぱねたら夫婦喧嘩だとガイドに呆れられてしまう。

仕方なく身体を硬直させて耐え忍ぶ。こんな状況下のため笑顔も浮かべられず、唇の端が引きつった。

ガイドは自分の撮影に満足したのか、親指を立てて白い歯を見せた。

(ホテルに帰ったら削除しよう。あっ、そういえばバレッタをバックにして彼に撮ってもらった写真もそのままだったっけ。それもまとめて消そう)

今度はあっさりと取り上げられないよう、デジカメのストラップを手首に巻いて膝の上に乗せる。こうすれば次は大丈夫だろう。


「写真撮られるのは嫌いなのか?」
「はい。自分の顔があまり好きじゃないので」


貴行に質問され、正直に答える。


「自分の顔が?」


そう繰り返したかと思えば、貴行は陽奈子の顔を覗き込んだ。

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