極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「ほんと勘弁してくれ。俺までプールに落ちるかと思ったぞ」
毒づく割には、どこか優しい笑みだった。
その笑顔が陽奈子の胸を高鳴らせる。
なにも言葉を返せずついじっと見入っていると、腰に添えられていた貴行の手が陽奈子を再び引き寄せる。
視界が貴行でいっぱいになったかと思った次の瞬間、唇が触れ合った。
数秒して離れた貴行の口が開く。
「陽奈子――」
その先になにか続くだろうと思われた言葉は、突如聞こえてきたヴヴヴという振動音に遮られた。
一瞬ポカンとした表情を浮かべた貴行はすぐに我に返り、ポケットからスマートフォンを取り出す。彼に着信があったようだ。
「悪い。仕事の電話だ」
そう言いながら陽奈子から離れていった。