極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

◇◇◇

翌日、マルタ国際空港――。

搭乗手続きを済ませた陽奈子は、チェックインカウンター付近でそわそわと落ち着きなく座っていた。
多くの外国人が行き交うなか、貴行の姿はどこにも見当たらない。

(貴行さん、本当に来るのかな)

昨夜たしかに『明日、空港で』と言っていたが、貴行が見送りにくる理由がわからない。

(なんのために? どうして?)

それよりもわからないのは、昨夜のキスだった。
おかげで陽奈子は朝までほとんど眠っていない。ベッドに入っても、明け方近くまでゴロゴロと転がったり、起き上がって部屋をうろうろしたり。

結局、現時点でも結論は導き出せていない。

時刻は午前九時。まもなく搭乗手続きが始まる頃だろう。
腕時計を確認しては、あたりをキョロキョロと見渡すのを繰り返しているうち、空港内にアナウンスが響き渡った。

(でも、あともう少しだけ……)

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