極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

この店で早紀にひと目惚れをしたそうで、猛烈なアプローチがあったのだとか。
陽奈子はまだ顔を合わせたことはないものの、早紀によると塩顔系のイケメンで爽やかな好青年らしい。


「あぁうん、彼は忙しくて。夜ご飯はたまに一緒にとったんだけどね。あ、陽奈子ちゃんはマルタ島、どうだった? きっと楽しかったんだろうなぁ」


早紀は話をガラッと変え、目を輝かせて陽奈子を見た。


「はい。おかげさまで楽しかったです」
「素敵な出会いとかあったりして?」


探るように見つめられドキッとした。


「な、ないですよ、そんなの」


咄嗟に貴行の顔が思い浮かび、慌てて打ち消す。
もう忘れると決めたのだから。
あの出会いは、旅先ならではのもの。そのときに楽しんでおしまい。

買ってもらったワインを飲み終えれば、それと同時に記憶から消えるだろう。

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