極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

「本当? 今ものすごく目が泳いたけどー?」


にこにこと屈託なく笑う早紀に、はいと何度もうなずく。かえってそれが不自然だと、陽奈子には気づく由もない。


「ずいぶんと楽しそうだね」


そう声をかけてきたのは、この店の店長である安西大和(あんざい やまと)だ。

三十歳の大和は大学時代には陸上選手としていい線までいったらしく、現在もトレーニングは欠かさないらしい。そのおかげもあってか引きしまった身体は当時と変わらないみたいだ。

短い毛をワックスで立たせ、優しい顔立ちをしている。

この店に店長として赴任して半年足らずだけれど、頼りになる人物である。


「陽奈子ちゃんにマルタ島の話を聞こうかと思って」
「そうか。陽奈子ちゃんはマルタ島へ行ってきたんだったね。どうだった?」
「はい、おかげさまでいい経験でした」


いろいろな意味でも。

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