極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

◇◇◇

仕事を終えて帰宅した陽奈子のスマートフォンが鳴ったのは、それから一ヶ月が過ぎたある夜のことだった。

ひとり暮らしをしているアパートは、オーシャンズベリーカフェまで電車で二十分。乗り換えせずに済むため、通勤にはとても便利だ。
築十年が経過した鉄筋四階建てで、二階の角部屋には大学を卒業して就職したときから住んでいる。

1DKの部屋のテーブルに置いていたスマートフォンの画面には、母・未恵(みえ)の名前。マルタ島から帰宅した日に電話をかけて以来だ。


「もしもし」
『陽奈子? もう帰ったの? 今、平気?』
「うん。大丈夫だよ」


ちょうどお風呂からあがり、着替えを済ませたところだった。


『実はね……』


未恵の声のトーンがいきなり落ちる。いったいなにがあったのだろう。

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