極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「どうしたの?」
『うん……。驚かないで聞いてね。実はお父さんの工場が倒産しそうなの』
「え!? どうして突然?」
とんでもない話が未恵の口から飛び出した。
父・豊(ゆたか)が経営している会社は主に船舶関係の部品を製作しており、冒険や博打的なことにはいっさい手を出さない堅実経営をしてきているはず。
それが倒産寸前とはどういうことか。
『お父さんね、友達の借金の保証人になっていたのよ』
「ええ! どうしてそんな!」
『お母さんも知らなかったの。そうしたら、その友達が行方をくらませてしまってね』
なんと二億円もの借金を豊が被らなくてはならなくなったという。
「だって、借金したのはその友達なんでしょう? いくら保証人になったからって、お父さんが全額負わされるなんておかしいじゃない。そんなの逃げるが勝ちみたいで変だわ」
『そういうわけにはいかないのよ……』
未恵はさらに声のトーンを落とした。今にも消え入りそうな声だ。