極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
バッグにしまっていたデジカメを取り出し、陽奈子は軽く頭を下げた。
彼から離れ、いい構図になりそうな場所まで小走りする。
(この辺でいいかな)
海の間際まで行き振り返ると、彼が手を振りもう少し右へ立つよう指示をする。
それに従い横にずれたところで、彼はデジカメを構えた。
(なんて絵になる人なんだろう)
彼こそまさしく被写体にふさわしい。スリーマをバックに陽奈子のほうが写真を撮りたい気持ちに駆られた。
おまけに、ただの写真撮影なのに端正な顔をした男性に見つめられるせいで嫌でも緊張する。遠目でも目が離せなくなる容姿に変わりはなかった。
「ありがとうございました」
撮り終えたデジカメを受け取り、手にしていた帽子をかぶる。撮ってもらった写真はホテルに帰ってから削除しよう。
いざ足を踏みだそうとしたところで、彼が不意に口を開く。