極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

◇◇◇

翌日、仕事が休みの陽奈子は電車を乗り継いで実家へ帰ってきた。

未恵から持ちかけられた話は、陽奈子自身に大きく関わる、いや人生を揺るがすほどのものだった。
そのため昨夜は一睡もできず、目がらんらん。ひと晩経った現在も、興奮状態は続いたままで眠気のねの字も出てこない。

そのくらい驚愕させられたのだ。

建坪五百の工場は、今日も金属を加工する音が響いている。
その隣に立つ陽奈子の実家は、昔ながらの日本家屋の一軒家である。
姉の萌々は結婚して出たため、現在は両親がふたりだけで暮らしている。

玄関を開けると、出迎えた未恵のうしろから萌々も顔を覗かせた。実家の一大事に駆けつけたのだろう。


「驚かせてごめんね、陽奈子」
「うん」


多くを返せない。なにしろ実家と工場の存続は陽奈子ひとりの肩にかかっているのだから。

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